【知的障がいのある女性にわいせつ行為】<〇〇容疑者の裁判傍聴。加害者家族の苦しみと覚悟>

久しぶりに裁判を傍聴した。

邸宅侵入、準強制わいせつ、住居侵入、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰ならびに児童の保護等に関する法律違反

40代の男性が知的障がいのある女性を狙ってわいせつ行為や盗撮を行い、逮捕されたこの事件。

すでに実名での報道がされており、顔写真も公表されている。

世間では当時、知的障がい者を「抵抗したり騒いだりしない」から狙ったという男性のその犯行の卑劣さに非難が集中し、犯人は厳罰に処すべきだとの意見がネットやSNSで叫ばれていた。


加害者家族の苦しみ

しかし裁判を傍聴した今、その「世間からの糾弾」がいかに残酷で恐ろしいものか、その「勧善懲悪」的な大衆の発想が、どれほど加害者の家族を傷つけ、絶望に陥れているのかということを考える。

というのもこの傍聴には加害者の家族が同席しており、今回の裁判ではその家族が証人として証言台に立ったからだ。家族の苦しみはその背中から私に伝わってきた。

自ら命を絶つことも考えたという加害者家族の苦しみを思うと、報道された事実のみを聞いて憤慨し、その怒りをネット上に垂れ流す人たちの無責任に複雑な思いを抱く。

今回、容疑者の実名をここで書くことは控えることにした。重大な事件だけに、簡単に興味本位で書いてはいけないと思うからだ。

もちろん、今回の犯行は決して許されていいものではない。

知的障がいのある女性を狙い、わいせつな行為をするなどというのは非常に卑劣である。

しかしその被告人には家族があり、その家族の人生は「加害者の家族である」という理由で不幸のどん底に陥れられていいものではない。

被害者およびそのご家族のご心痛をお察し申し上げるとともに、今回の裁判の概要をここに記したいと思う。


きょうだいの証言より

証人であるきょうだいは若い頃から病気を患っており、治療を現在も行っている。家族は被告人が20歳くらいのころまで一緒に暮らしていたが、その後被告人は就職、以降のコミュニケーションは互いに「元気にしているのか」という簡単なものにとどまっていた。

事件後、母から容疑者が捕まったという電話があり、国選弁護人からは「内容はネットで調べてみて」と言われたが、ショックでそれが出来ず、その後被告人の友人から事件の詳細を聞くこととなった。

きょうだいは自身も子どものころに犯罪の被害にあったことがあり、今回の公開法廷できょうだいは被告人に「被害者が一番そばにいたのだ」ということを伝えなければいけないと思ったという。

被告人が捕まってからの面会は50回を優に超える。

それは被告人に「被害者の心に近づいてほしい」との思いからである。

家族は、自分たちが自殺をすれば被告人が自らが行ったことの重大さに気づくのではと考えたが思いとどまり、市役所に相談。被告人を医療にかかわらせることで更生させる決心をした。

今後は家族の目の届く範囲に被告人をおくことで彼を監督し、その更生を図りたいと考えている。


被告人の言葉

被告人は今回の事件について「被害者の方に苦しみや悲しみを与え、取り返しのつかないことをしてしまいました、申し訳ありません」とまず、謝罪の言葉を口にした。

今回の犯罪を犯す原因となった性的な興味は30歳頃から湧いてきたといい、それまではその種の興味はなかったという。

盗撮行為は5~6年前から行っており、被害者を触る行為は3年ほど前から行っている。

警察に捕まるのではというおそれは犯罪行為を始めたころこそ感じていたが、行為を繰り返すうちにその危機感は薄れ、次第に自分だけは大丈夫であると思い込むようになった。それは犯行が発覚するのを恐れてのマスク着用などをしていなかったところにも顕れている。

被害者の体へのいたずらについて、それ以上の行為には及ばなかった理由を、

「このような犯罪をおこした私が言うのはおかしいが、それ以上の行為には嫌悪があった」

といい、撮った写真をネットで売却したりすることも行っていないと話した。

それは彼なりの「モラル」であるというニュアンスであった。

前科はなく、今回のような犯罪に手を染めた要因の一部として、

「若い頃から他人とのコミュニケーションを避けていた。打ち込む趣味もなく、いったん盗撮をはじめたら、それが趣味のようになってしまった」

と自らを分析し、犯行後も被害者の気持ちに思い至ることはなかったという。

捕まった時の心情として、

「自分はこれからどうなるのかという不安感があった。捕まるということはそれを訴えた人がいるということ。そのときに被害者の気持ち、どんな気持ちで被害を訴えたのか、と考え、自分は悪いことをしてしまったと後悔した。そして自分の周りにも迷惑をかけたと後悔した。と同時にホッとした気持ちもあった」

と話した。

ホッとしたとはどういうことかと聞かれると、

「これ以上罪を重ねなくて済む。これからはもうこのような犯罪は行わない」

と答え、捕まる前に自らの犯行を止める自信はなかったと話した。

被告人は被害者の心情や調書を読み聞かせられているという。その被害者の心情に触れてどうかと問われ、

「大変なことをしてしまった。人の魂、人の心を踏みにじってしまった」

と答えた。

家族については、父は亡くなったこと、その父は被告人が中学校の頃に愛人がおり、その裏切り行為について母を可哀そうだと考え、そのことで父とはコミュニケーションをとれていなかったとも話した。

逮捕後、身の回りのことを手伝ってくれるきょうだいの献身的な姿勢については、

「このような重大犯罪者に手を貸してくれてありがたい、申し訳ない」

と話し、投薬治療を行っている中での50回以上もの面会について、命を削って支えてくれていることがありがたく、また申し訳ないと話した。

被告人はまた、面会を繰り返す中で”変わった”といい、逮捕後の数十回に及ぶ家族との手紙のやり取りの中で、もう二度とこのようなことはしないこと、そして近況をつづっているという。


母は、「被告人は自分の子だからやさしさで支えるしかない」と考えており、その母に対し、被告人は、「命を削るように支えてもらって本当にありがたい、それだけです」と話した。


また、被告人は今回の事件により社会的な制裁をうけており、26年間務めた上場会社は懲戒解雇となっている。被告人は小学生のころからプログラミングを行い、高等専門学校で電子工学を学び、卒業後、金融や証券などのシステムを作るエンジニアとして専門性を要する仕事に就いていた。

なお、被告人は今回、保釈請求を行っておらず、住居も現在の場所から遠く離すという。その理由として、「私が行ったような犯罪の場合、被害者が(私に)恐怖心をもち、私が報復に来ると考えるのではと思った」からだという。


また、被告人は被害者家族に少額ながら弁償している。それを被害者家族が受領したことについて「ありがたいと思う」と話し、今後、現在持っている不動産を売却し、その売却益を被害弁償に充てるつもりだという。


なお、被告人には数年前から交際している女性がいる。そのような人がいるのになぜ犯行を止められなかったのかと問われると、「彼女と会っているときの自分と犯行に及んでいるときの自分は、二重人格というとおかしいが、意識が乖離していた」と話し、その彼女は「これが最後のチャンスとして、更生に力を貸す」と言ってくれたという。


検察側からの質問より

被告人は犯行時の心情として、一貫して被害者の気持ちを考えることができなかったと話し、数年の間に起こしている犯行について、被害者のうちの一人に対しては2回、卑劣な行為に及んでいる。捕まることは全く考えておらず、ヒヤッとしたこと、また通報される危機感について、それはなかったと話す。

犯行については趣味のような感覚に陥っており、やめたいと思ったことは逮捕の直前までなかったと話した。逮捕されホッとしたという発言について、検察に「ホッとした、というのは、やめたいけどやめられなかったときに使う言葉だと思うが」と問われると、「自分でもよくわからないけれど、そうだった(ホッとした)」と答え、知的障がいのある女性を狙った理由については「警察や家族に訴えないのでは、発覚する恐れがないのでは」と考えたからだと話した。

お金を払って合法的に性欲を満たすところがあるが、なぜそういったところを利用しなかったのか、という質問には「そういうところは好きではない」と答え、今後、治療は自らの意思で行うので、再犯の恐れはないと話した。


被害者の家族より(概要)

平穏な生活を送っていた娘、笑顔でいてくれた娘の将来が危ぶまれている。

純粋な子にこんなことをするなんて。

娘はこれから人を恐れるようになるのではないか。

私(親)は自分を責めている。

犯人には厳罰を求める。


弁護人の意見

被告人は素直に罪を認め、争う姿勢をみせていない。

被害者に対する罪は、狡猾で卑劣で、そのことについては論を待たないが、(撮った写真を隠さないなど)その犯行の態様は稚拙で鈍磨なのは明らか。逮捕についてはさらなる安堵感を口にし、余罪も口にしている。撮影は営利を目的とせず、あくまで自己満足のために行った。

一般情状

被告人は自らの軽率さを自覚し、真摯に反省し、少額ながら被害者に弁償している。実際に弁償のためにマンションの売却手続きを進めており、住居も首都圏から離すことにしている。弁護士に自らの動向を報告し、各被害者の懸念を払しょくしている。

また、被害者は解雇され、実名報道もされ、社会復帰が困難となっており、保釈請求もしていない。

これまで一つの会社に勤務し、一定の社会制裁もうけており、初犯である。

闘病中のきょうだいや交際相手がその更生に尽力しており、再犯の疑念は差しはさめない。母も更生に尽力しており、更生は強く期待できる。

病院で今回の犯罪の要因を分析、治療の予定で、入院の予約も行っている。被告人は自身の現状を放置することをしていない。

よって再犯の恐れは少ない。


被告人の言葉(概要)

私の罪の重大性、悪質性を鑑みると、被害者の方やご家族に許されざる罪を犯したことは明らかです。

私にできることは、許していただけなくても、一生、もう二度と罪を犯さないこと、社会に対してつぐないの気持ちをもって接することです。

犯罪という形ではなく、良い形で社会に繋がれれば、まわりまわって被害者の方ににほんの少しでも償いになるのではと考えています。

具体的には今の私には言えないですが、それをずっと考え続けて実践すること。それが更生につながると考えています。本当に申し訳ございませんでした。


※この記事は、裁判の内容、および交わされた言葉を寸分の誤りなく記したことを保証するものではありません。なお、犯行の内容については詳細を控えました。





















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