傍聴人入り口から入廷すると、被告人席にはすでに男性が座っていた。 いたって普通の青年だ。 どちらかというと色黒の肌。 頭にはりつくように生えている、ややクセのある黒い髪。 この、いかにも好青年に見える男性が犯したのが、 住居侵入、強姦未遂だ。
事件の概要
被告人はかねてより車に乗って好みの女性を物色し、女性の部屋を覗き見るという行為を行っていた。 犯行当日も好みの女性を探して部屋を覗き見るなどしていたが、その帰宅途中、以前から覗き見により好感をもっていた女性宅に寄ることを思いついた。
室内で同人が寝ているのを見て、侵入しようと思い立ち、玄関ドアに手をかけると無施錠であったため、ドアから侵入した。被告人はあおむけで寝ていた女性の着衣の中に手を差し入れ、乳房をもむなどし、性交渉をしようと試みたが抵抗されたため、目的を達することなく逃走した。
被害女性側の告訴状の内容
ベッドで寝ているとき、人の気配を感じて、目を覚ましたら男が枕元に立っていた。
男は、「カギが開いていたからな」と言った。 私はとっさに体をガードする姿勢をとった。 男は私にのしかかり、私の両腕を押さえつけた。 私は足をばたつかせて男をはねのけようとしたが、足を押さえつけられているような感じであったので、男が足元に乗っていたのだと思う。
男は私の腕をこじ開けようとしてきて、「力を抜け」と言ってきた。 私は「このあと人が来ますよ」と言ったが、男は私を襲うことをやめなかった。 必死で抵抗し、一瞬離れた自由になった手で男の左手首をつかんだ。 男は左の乳房を一回揉んだ。
私はもう一回、「このあと人が来ますよ」と言った。 男はようやく立ち去った。 私は男に2~3分はのしかかられていたと思う。
被告人の前科と事件のいきさつ
もともとこの被告人は車を走らせながら女性を物色、好みとあらば部屋をのぞき見し、などということを、月に2~3回は行っていたという。歩いている女性に後ろから突然抱きつき、胸を揉むというわいせつ事件も起こしている。 今回の被害女性も知らぬ間に”見初められて”いて、鍵をかけ忘れたたまたまその日に男が訪れ、被害にあってしまった。
被告人の、裁判官とのやりとりで見受けられる態度はごく普通で、声もソフトだ。なぜ、という思いがますます深まる。この被告人に”性欲”がなければ、おそらく彼はごく普通の社会生活を、いたって健全におくっていたのであろう。
彼は大学も卒業しており、就職もしている。
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