【強盗か恐喝か】女性を脅して1万円を窃盗・50代男性の罪状は

傍聴人として席にすわってしばらくすると、被告人が入廷してきた。 脇には警官、手には縄がくくりつけられている。 50代から60代と思われる男性。 深く刻まれたシワの中には、人生に対する不満と苦悩に満ちた顔がある。 その面持ちはいかにも窃盗犯だ。 短めに刈られた頭、紺色のスウェット。 彼は入り口に対して奥にあたる席に座らされ、ただただうつむいている。 しばらくの間、法廷内では誰も言葉を発することなく、時間が流れた。 すると扉が開き、男性が法廷の外側から何かを指示した。 その直後に被告人の縄が外され、流れ込むように裁判官や裁判員などが入廷し、裁判が始まった。 


今回の事件の概要 

被告人は被害女性(年配)が自宅マンションのエントランスでインターホンを操作している際、持っていた防犯スプレーを彼女の顔面に噴射、慌てて路上に逃げた被害者に金を要求し、一万円を奪った。被害者は目を負傷。 


今回の争点 

今回の裁判の争点となっていたのが、 「被告人が犯した罪の種類は 強盗なのか、恐喝なのか」 ということであった。 検察官の主張は強盗致傷、被告人の弁護士が主張するのは、恐喝。  両者は罪の重さや量刑において差がある。 簡単にいうと、強盗より恐喝のほうがマシ、なのだという。 


強盗と恐喝.

どちらも「暴行と脅迫を用いる」という点では同じである。 ただ、その暴行、脅迫の程度が 

・強盗・・・相手の抵抗を抑圧する程度のものである (完全にとまではいかなくても、抵抗できなくする) 懲役は5年以上20年以下 

・恐喝・・・一般の人を畏怖させる程度のものである (○○をばらされたくなかったら、という心理的な脅しや、胸倉をつかんで脅かすなど) 懲役1年以上10年以下 

ということ。 つまり、実際に殴って相手が抵抗できなくなったところで金を奪うと強盗、ビックリさせたり脅したりしてお金を巻き上げれば恐喝ということになるそうだ。 


今回の争点は被告人が行った犯行が、被害女性にとってどの程度の暴行であり、脅迫だったのか、というところにある。 では、今回の事例はどうだったのか。


 まずは検察側(被害女性側)の主張。 

この事件では、被告人は被害女性の顔面に防犯スプレーを噴射し、路上に逃げ込んだ彼女を追いかけ、後ずさりしたところににじり寄って、「金をだせ、騒ぐと殺すぞ」と脅かして金を奪っている。 防犯スプレーを吹きつけられることは恐怖であり、この際の恐怖は強い 被害女性は防犯スプレーを目に受けており、相当な痛みを伴っている 目の負傷について、実際に医師の診断がおりている。 「金を出せ、騒ぐと殺すぞ」と強く脅されている.


 こうしたことから、被告人の行った暴行、脅迫は「被害者が抵抗できない程度の強いもの」であり、強盗罪が適用されると主張した。 


一方、被告人の弁護士は 

今回の事件で使われた防犯スプレーについて、 「被告人がスプレーを使ったのは単に驚かせるためであり、その目的は、被害者の反応を鈍らせることにあった。噴射は一瞬だけで、現に、被害女性は被告人をその目でとらえながら路上に逃げることができた。顔に多くのスプレーがかかっていたら、被害者は顔をぬぐったり、目を押さえて痛がるはず。防犯カメラの映像からも、その様子が確認できない。だから、これは被害者が抵抗できない程度の強いものとは言えない」 と主張。

 他にも、 被告人は被害者に対して 「金を出せ、騒ぐとと殺すぞ」とは言っていない。被害者が大きな声をだしたので、 「静かにして。お金ちょうだい」と言っただけである。被告人が、あえて人のいる路上で騒ぐと殺すぞ、などと言う筈がない、という論法だ。 

加えて 被害女性が事件後に接触した友人宅で目を洗浄しておらず、また、事件後、救急車がくるまで30分経過している点をついて、被害者は「応急処置をしていない」とし、応急処置をしなくても大丈夫だったのだから、やはりこれは被害者が抵抗できない程度のつよい暴行、脅迫ではなかった、というような主張した。


 私はこう思います 

これは全く一般の感覚で、 防犯スプレーを顔に向けて噴射したうえ、おびえて逃げる女性に、”静かにして。お金ちょうだい”、なんて、そんな可愛い言い方する?と思うし、 検察官が主張するように、わざわざ防犯スプレーを持参する計画性、それを実際に吹き付ける危険性、与える恐怖の大きさ、目に障害を与えた結果を考えると、どう考えてもこの犯行は悪質だし、ちょっと脅してお金をもらえたら、なんていう恐喝程度の犯行ではない気がする。 

しかもこの被告人、出所7か月たらずで窃盗を次々と4件(侵入やひったくりなど)起こしており、その犯行の手口も、次第にエスカレートしているという。 ただ、使ったものが防犯スプレーであったり、この被告人が最後に話したとき、その雰囲気が意外にも弱弱しい感じだったことなんかを思うと、ただだらしなくてお金が欲しい&それを短絡的な方法で手に入れることしか考えられないタイプなのかな、という印象をもった。 

本人のイメージは恐喝.被害を受けたほうは強盗の感覚、なのではないかなと思う 

※なにより、千枚通しをバッグに忍ばせていたこと自体が被告人の強盗気質を物語っているように思うのでした・・・。


求刑 

こうしたことを踏まえ、検察側は懲役6~8年を求刑。 一方、弁護側は懲役4年が相当、ということだった。 


被告人の言葉 

この度は大勢の方に迷惑かけて、申し訳ないです。 ただ、最初に申し上げたように、私は「騒ぐと殺すぞ」とは言っていません。 こちらがビックリするくらい大騒ぎされたので強い言い方で、 「静かにして、お金ちょうだい」と言いました。 騒ぐと殺すぞというのであれば、スプレーみたいないたずらグッズのような、おもちゃのようなものはつかいません。 バッグには千枚通しなども入っていたので、 もし騒ぐと殺すぞなんて言う場合はそちらを出しています。 相手にけがをさせるとかのつもりはありませんでした。 ひるませて、そのすきにひったくって逃げようかなと思ってやりました。 相手を脅して「騒ぐと殺すぞ」とは言っていません。 ただ、一万円をとったりしたことは事実です。 申し訳ないと反省しています。 できることなら働いて 少しずつでも返していきたいと思っています。 自分の欲望のために大勢の人に迷惑をかけて申し訳ないです。

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