被告人席に座っている男性は50代に見える。 背は高くなく、くねくねとクセのある髪に、黒めの肌。 伊達のような眼鏡の奥にある瞳からは、とくに何の感情も伝わってこない。 ピンクのチェック柄のシャツの下にある身体は、中肉中背よりもやや太めといったところか。 そんな中国人の彼にかかっている疑いが「準強制わいせつ」だ。
公訴事実
被告人は自らが経営する美容整体サロンにて客の女性に対し、マッサージを装いわいせつ行為を行った。女性は紙パンツに紙のブラジャーをつけて施術をうけていたが、被告人は手指を紙パンツの中に差し入れ、陰部を触り、手指を膣内に挿入した。
被告人と検察、および弁護人のやりとり
裁判官 公訴事実は事実ですか?
被告人 事実ではありません。私は女性客にわいせつなことをしようと考えたこともないし、したこともありません。
裁判官 起訴内容では、手指を紙パンツの中に差し入れて陰部をさわり、手指を膣内に挿入したとありますが、これは事実ですか
被 そういうことはありません
裁判官 お客の来店した日時は事実?
被 そうです。
弁護士 被告人はわいせつ行為を行っていません。被告人は無罪です!
私はこう思います
今回は被告人が中国人であったため、通訳を伴っての裁判となった。しかしその通訳が検察や裁判官が話すことばを流暢な中国語で被告人に伝えているそばから、被告人は、「ソウイウコトハアリマセン」などとほぼ完ぺきな日本語で答えるので、私は思わず笑いそうになってしまった。コレ本当に通訳いるの?
ところで私は、起訴内容を真っ向から否認する被告人というものにはじめて遭遇した。 「やっていません!」 これは思いのほか衝撃的だった。 これだけ具体的な事実を目の前に突き付けられているのに、なんというか、「火のないところに煙はたたない」ハズなのに、きっぱりハッキリやっていないという被告人。そして、その直後に若い弁護人が放った「被告人は無罪です!」という言葉。被告人がやってないといっているんだから無罪!ってそんな・・・。
それにしても、紙パンツだとか陰部だとか手指を差し入れただとか、結構赤面モノのことばが至極真面目な空気のなかでふつうに響き渡る感じは、さすが裁判だ。しかしこの中国人の男性、本当にやっていないのかな。よく電車内で痴漢の疑いをかけられて冤罪となってしまう悲劇があるが、今回の疑惑の舞台は「マッサージ店」だ。こんなことを言ったらいけないのかもしれないが、「おまえさん、本当はやったんでしょ~」とつい、思ってしまった。
今回の裁判は、私はなぜか眠気をこらえながらの傍聴だった。被告人の隣に配置されている警官もなぜか退屈そうで、一人は靴の中で指をもぞもぞさせていたし、もう一人は斜め下を向いてなんだか今にも眠ってしまいそうだった。
(今回はまとまりもなく、大した意味も無いコメントでした・・・)
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