【ポン引き】が生活の支え 60代男性の現実

両脇に警察官を配置され、60代と思われる男が座っている。 白髪と禿げの混在した頭。 清潔感のない肌にヨレた黒いトレーナー。 カチャカチャと手錠を外す音が聞こえ、裁判が始まった。 


概要 

被告人は売春をあっせんする目的で某日午後11時頃、新宿歌舞伎町2丁目にて通行人に「イイ娘いるから、大丈夫だから。日本人だから。最後までOKだから。24でいいから」と声をかけた。しかしこの通行人は売春取り締まりを行う警察官であり、警察官がホテル前まで移動したところで被告人は現行犯逮捕された。


 犯行にいたるまでの経緯 

被告人は機械科の高校を卒業した後、印刷会社に勤務するも昼夜逆転の勤務についていけず、1年余りで退職。その後結婚し、他の会社に移ったが、30過ぎから60歳手前までトビ職として働いた。(現在独身であることを考えるとおそらくどこかの時点で離婚しているのではないか)不景気で生活に困窮し、売春あっせんに手を染め、同種の犯罪は8件に及ぶ。 

今回の犯行は、前科の執行猶予がすぎた直後に及んだもので、週に2~3回、このポン引き行為をし、月に5万円程度の収入を得ていた。 被告人は客から受け取った24.000円のうち、4.000円をホテル代にあて、10.000円を女性に渡し、残りの10.000円を自分の取り分としていた。 被告人は客を得るとホテルまで連れていき、携帯で女性を呼び出していた。 被告人とその弁護士とのやりとり 今回の裁判では、弁護人が被告人に語りかけるように質問をする場面が印象に残った。 この語りかけによって弁護人は、被告人の勧誘に強引さはなく、その誘い方は多少しつこかったにせよ、通行人をひっぱるなどの身体的な接触はなかったという事実を被告人本人から引き出した。そして、その点を斟酌するよう裁判官に求めたものである。 


弁 売春、よくないのはわかってるよね 

被 はい、法律ではよくないとなってますよね 

弁 まあね、家庭の生活を乱すとか、男女の人権の問題とかね、良くないんですよ。 あなたは口でまず、勧誘したの? 

被 そうです。 

弁 多少しつこかったんだろうけど、まあ、でも身体的な、ひっぱるとか、肩に手をおくとかは? 被 やってません 

弁 女性とのトラブルは? 

被 全然トラブルはないです 

弁 過去に暴行事件あるね?通行人とトラブルだったみたいだけど、ポン引きと関係ある? 

被 全然関係ないです。

 

経済的な困窮も犯罪の一因 

前述の弁護人の語りかけの中で、被告人がかつて生活保護を打ち切られ、数年前に手に入ったお金(定かではないが、親の保険金だったと思う)も底をつきかけたことから再犯に及んだことが明らかになった。 肉親には妹がいるが面倒をみてくれるという間柄ではなく、定職もなく、結果的に手っ取り早く日銭が入るポン引きに手を染めてしまったのである。 身体も悪く、なぜか上の歯がすべて抜け落ちてしまったという。糖尿病を患い、前立腺も腫れており、健康の不安も大きい。仕事をさがしたのか?という弁護人の質問にも、「体力がムリで」と答えていた

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